写真集「透明な剥製」

フォトグラファー:ななしき

記憶という生モノ



高校一年生の冬、未曾有のパンデミックによって多くの制限を受けた高校生としての一年が終わろうとしていた。


私はその一年を思い返して、制限の中やっとの思いで作れた幸福な記憶すら、いつしか過去に消えてしまうような気配を感じました。


その数少ない記憶という生モノをこれから先も腐らせることなく、剥製のようにいつまでも美しく残しておきたいと強く思うようになり、自らと周りのプライヴェートを作品として残す「私写真」を撮るようになりました。


写真集という付加価値

高校三年生になる頃には、写真集や展示を鑑賞する頻度が増すことで、自分の目指す私写真の理想像がこの時期に見えてきました。

その後、ただ暮らしの様子や旅行先の出来事を記録するだけでなく、多くの光を科学的に閉じ込め、

牧歌的な空気感を表現できる中判フィルムを意識した色調と重厚さで、記憶という生モノに、色彩という防腐処理を施した私写真を目指して、作品を制作しています。

作品への想い

昨日と同じ事を繰り返しているだけなのに、少しずつ確かに変化していく”暮らし”は、私の私写真の作品制作において欠かせないものです。

なぜなら、私たちが生きていく間に最も多くの時間を使っているのはこのような暮らしなのに、生モノである記憶においてそれは、一瞬の出来事である卒業式などに比べて、あまりにも早く腐ってしまうからです。

生涯の大半を占めるその腐りやすい暮らしを、写真として残し防腐処理を施すことに、私は写真を撮るに至るプリミティヴな欲望を感じます。

だから、平成をレトロと言い、光学ファインダーを覗くことのない時代で育った私たちの、今とこれからの”生き様”を私写真として撮り続けたいと考えています。

作家「ななしき」について


18歳なので頑張れば砂とか食えます

日本大学芸術学部
@YouTube
@7shikiwakko.

ななしき公式ウェブサイト

ギャラリー

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